らもはだ日記

トークイベント「らもはだ」はテレビ的なゲストが続いた。

2004年1月10日のゲストは私にとって放送作家界の大先輩に当たる高田文夫先生。
開演ギリギリの時間に楽屋入りして、いきなりらもさんに「いつ出てきたの?」と、つかみのギャグ。「はじめまして」と挨拶したオレに「兄(あん)ちゃん、オレと会うの初めてだよな!?」。
今までの「らもはだ」ゲストには全くなかったプロの喋り手としてのオーラ全開。放送作家ながら落語の立川流に入門、噺家としての一面もある高田先生。
オレも司会のアトムさんも一気に緊張。「面白いこと言わない奴には用はない」って空気がビンビンに伝わってきて、スタート前から背中にイヤ~な汗が。

テレビでコントを書いていた元放送作家のらもさんに、大御所の高田先生、それに今現役バリバリのオレという放送作家3人が揃い踏みとなった本番のステージ。
らもさんは、高田先生とは映画「星くず兄弟の伝説」で、
○背の高いギャング=景山民夫
○目のでかいギャング=高田文夫
○大阪弁のギャング=中島らも
って配役で共演して以来の仲。実際に会うのは17年ぶりとのことだった。

「その映画に出た3人のうち、一人は火事で死んじゃうし、一人はパクられるし、まともなのはオレだけ。オレの仲間はみんなそう前科もんばっか。前科ったって『レッツ・キッス』じゃないよ。… … って、おいおい!ボ~ッとしてないで『それはジェンカでしょ!』ってツッコンでくれよ。頼むよ!」
さすが、「ラジオビバリー昼ズ」のニッポン放送お昼の顔。江戸弁のマシンガントークが生で炸裂。
「知り合いのラジオ、らもさんがゲストで2週分録ったのがあったらしいんだけど、オンエア直前に捕まったから2本ともボツ。番組がトんで、みんな歌ってましたよ。
♪中島らも トんだ 大麻でトんだ~(童謡「シャボン玉」のメロディーで)」

とにかくトークのテンポが早い早い。
こんなにお喋りなゲストはこれまでいなかった。隙あらばボケようとして、ツッコミきれずにアワアワするオレに「こんな時はちゃんとフォローすんだよ!」とお叱りの言葉をズバズバ。
いつもの「らもはだ」ゲストの3倍速トーク。もう1時間は喋ったかとふとステージの上の時計を見たらまだ30分しか経っていなくて驚く。どれだけ早口なんだよ。
でも、中島らもは普段通りのマイペース。
2人で昭和30年代のテレビの話で盛り上がった。
「いいよもう、切り上げて早く打ち上げに行こうよ!」
途中で、客に聞こえないようオレとアトムさんにソッと耳打ちしてくる高田先生。まだ予定の半分の時間にもなっていないのにもう飽きてやんの。

そんなせっかちで江戸っ子気質な高田先生に困っているところに、救世主登場!高田先生が可愛がっているモノマネ芸人の松村邦洋が乱入。
途中で飽きちゃうことを見越して、自分のおもちゃ代わりに高田先生が呼んだようだ。
「らもさんにどうしても挨拶したいって言うから連れてきたんだよ。おい、松村!」
客席から、松村登場。
あとは、川藤幸三、掛布雅之、野村克也、貴乃花親方が「中島らもの今回の逮捕について語る」ってモノマネメドレーを即興でやり始めた。
それぞれのキャラがいかにも言いそうな口調で綴る、モノマネを超えた憑依芸。やはり芸人は板の上に乗った時の地力が凄い。とても放送できない危ないネタの連発で腹がよじれるほどに笑わせてもらった。

やるだけやって「じゃ、そろそろ帰るわ!」と松村を連れてサッサッと舞台を降りていく高田先生、粋でした。うだうだずるずるのナニワトークが特徴の「らもはだ」に吹いた江戸前の一陣の風。高田文夫のもうひとつの顔である落語家・立川藤志楼が垣間見えた気がした。
時間を20分も巻いて終了。これも「らもはだ」始まって以来。
打ち上げ皆勤賞だった司会のアトムさんがめくるめく展開に「今日はもう疲れ果てて」と言い残して先にホテルまで帰ってしまった事実で、高田先生のスピードに圧倒されてどれだけヘロヘロになったかわかってもらえるだろうか。


もちろん打ち上げの席でも本番以上のマシンガントーク。
「それで、談志師匠と会ったことはあるのかい?」
いきなり高田先生が切り出す。
「オレが仲介すっから、一度、談志とらもの対談、やっといたほうがいいよ。よし、オレが話をつけてやるよ」
その話を横で聞きながら、もしこの話が実現すれば今度の「らもはだ」は立川談志さんがゲストかも!? とビビる、オレ。

打ち上げの店はいつもの犬鍋で有名な「上海小吃」。
この鍋は初体験の松村邦洋、一口食べるたんびに「ワン!ワン!」とモノマネで犬の鳴き声に一同爆笑。
結局、朝までコースに。
業界の大先輩を前に慣れない気を使ったせいか、次の日、寝込んでしまったオレであった。

(つづく)