らもはだ日記

1985年10月19日。

土曜日の夕方5時30分、読売テレビにて、中島らもさんにブレーンとして呼ばれた番組「なげやり倶楽部」のオンエアが、ついに始まった。

この番組、総合演出のツジさんの指揮のもと、ゲストを迎えてのトークコーナーに、東京で人気のアーティストのライヴ、その合間にシュールなコントがバスバス挟まるオムニバス形式って内容で落ち着いた。

トークとライブ部分は、神戸のポートアイランドに出来たばかりのレストラン、エキゾチックタウンで公開収録。
もちろん、オレも現場に立ち会っていた。

第一回目のトークゲストが細野晴臣さんに、鮎川誠さん。司会は、らもさん。今考えると凄い。こんなに寡黙なキャラの人たちを揃えてのトークコーナーなんてありえない。
らもさんの好きな「ロックな方々」を素直に呼んだらこの人選になってしまったのだ。

テーマが「天敵を探せ」。自分の天敵と思える苦手な人物をあげてもらって、どこが苦手かを話すという趣旨。なかなか普通でも喋りにくいお題である。
しかも、公開収録って形式のため、数十人のお客さんがらもさんとゲストの周りを囲んで見ている状態。衆人環視の中、芸人ならまだしも普段人前で喋り慣れていないミュージシャンは余計に固まってしまう。

とは言いつつも。
見ている客のほうが「いったい誰が喋るのか?」と緊張するくらい誰も喋らない。まずホストのはずのらもさんが、ひと言喋ったら1分くらい黙っている。
細野さんも聞かれないと何も喋らない。
鮎川さんも自分から積極的に喋ったりはしない。

延々と続く沈黙の時間。
寡黙トークの三すくみ状態。
現場で見ていて「しまった!もっと喋りやすいテーマにしとけば良かった」と思ったが後の祭り。
ゴクリと自分が唾を飲み込む音が聞こえてきそうなくらいの静寂が続く。

「・・・」
「・・・」
「・・・」
あまりに続く沈黙の時間に、あの鮎川誠さんがたまりかねて
「あの・・・」
とひと言発した瞬間にCMへ。

寡黙なロックンローラー鮎川誠にまで気を使わせる番組。「なげやり倶楽部」は、初っ端の収録から波乱含みのスタート。

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