らもはだ日記

一度、らもさんの家で人が死にかけたことがある。
その人の名はマットーヤ茂平。あの内田裕也さんに芸名をもらった裕也さんの舎弟。「なげやり倶楽部」のアシスタントで、体重100キロ超えの、殺しても死なないような超頑丈な巨漢タレント。
「なげやり倶楽部」の収録終わりの流れで出演者&スタッフみんなで飲みまくって、最終的にかなりの大人数でらもさんの家に転がり込んだ時のこと。

深夜までどんちゃん騒ぎ。
最後は全員、リビングの床で雑魚寝状態に。
もちろんその中にオレもマットーヤ茂平もいた。
朝方、いつものごとくド二日酔いで目が覚めたオレ。
昨日、音楽関係の友達にもらったハードコアパンクバンド、ラフィンノーズのメジャーデビュー盤のカセットテープがポケットの中にあった。
ステレオにセット。
みんな寝てるのにガンガンに聴き始める(今思うと、なんて迷惑なヤツなんだろう)。

アルバムの1曲目「ブロークン・ジェネレーション」が爆音で鳴り響く。
朝っぱらからそれを聴きながら、ポゴダンスするオレ。
すると、その音で2階の寝室かららもさんが起きてきた。
「キミ、起きるの早いなあ」
スピーカーから爆音。
「これ、何?」
「今度、メジャーデビューするラフィンノーズです」
「パンク聴くんやったら、もっとボリューム上げなアカンよ」
ステレオのボリュームのツマミをマックスにする、らもさん。
その時、オレもらもさんも、天井近くの棚の上に置いてあったスピーカーが爆音に揺られて徐々にグラついてきていることに気がついていなかった。

♪NEVER MIND NEVER MIND BROKEN GENERATION

超ノリの良い曲に今度はらもさんもポゴダンスし始める。
2人で曲に合わせてピョンピョン床の上を飛び跳ねていた、その時!
棚の上のスピーカーが爆音に耐え切れず真下に落ちてきた!
そして、床に寝ていたマットーヤ茂平の頭めがけて、でっかいスピーカーが急降下!

「あ、死んだ」
らもさんもオレも瞬間的にそう思った。
スピーカーの角の部分が頭に突き刺さってコイツは死んだと。
頭がグチャリと押し潰れ、脳味噌があたり一面にピシャーッと飛び散る。スプラッター映画のような酷い光景が目の前に広がるんだと。
しかーし!
今まさにスピーカーの先っちょが茂平の頭に届かんとした瞬間。

ゴロン!

奇跡は起こった。
スピーカーが落ちてきたすんでのところで、茂平が寝返りを打ち、さっきまで彼の頭があったちょうどその位置に、スピーカーの角が突き刺さるように落ちて大きくバウンドした。
ボコンッ!
鈍い音が響く。スピーカーがバウンドした後の床には大きな穴が空いた。
間一髪セーフ。

「うん、何?」
耳元でした大きな音に一瞬目を覚ました茂平。寝ぼけ眼で辺りを見回して、また何事も無かったかのように再び眠りこみ、ムニャムニャと夢の中へと戻っていった。
呑気な本人を見ながら、顔面蒼白のらもさんとオレ。
顔を見合わせてお互い無言のまま。
もう少しで殺人犯になるところだった。

(つづく)

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