らもはだ日記

「あ… あ… あ…」
あまりのルックスのインパクトに二の句が継げない。
まさかの中島らも予想通りの展開。
しかし、どんなブスが来ようとも。一度火が点いた性欲の炎はもう抑えられない。
とりあえず、いつもらもさんに連れて行ってもらっている梅田のせんべろ酒場、正宗屋に直行。
まずはビールで乾杯。
「来てくれるとは思いませんでした」
ヨウコ(仮)ちゃんがしおらしく宣う。
「オレのほうこそ」
それから何を話したのだろう。一合180円の激安二級酒をしこまた飲んでベロベロに
どこまで純情だったんだ、オレ。
女性とこんな風に2人っきりで話すのさえ初めてだった。とにかく酔っ払わないと恥ずかしくて次のアクションが起こせないと飲みまくり。

聞けば、ヨウコ(仮)ちゃんはごくごく普通のOLさん。ビックリハウスでオレの名を知り、その流れで、童貞作品集「父しぼり」を読んで感動したという。
何時間飲んだだろうか。
「なげやり倶楽部」でもらっていたギャラで懐は温かかった。あとは、どのタイミングであのひと言を言い出すかだ。
正宗屋を出て、これ見よがしに鋲打ち革ジャンのポケットからブロンを取り出して一気飲み。
「こうすると気持ちよくなんねん」
おクスリでラリってる不良な自分を見せたかった。それがカッコイイと思っていたのだ。
アルコールとブロンという一番やっちゃいけないちゃんぽんで、理性のタガがぶっ飛んだ。
「ヤリタイ!とにかくヤリタイ!今すぐヤリタイ!外でもいいからヤリタイ!」
心の中で叫んだ。

自分でも何を思ったのか、ヨウコ(仮)ちゃんを正宗屋のすぐ前にある電話ボックスの中へ連れ込む。
思いっきり唇を吸った。
「痛い」
「ごめん」
もちろん股間は恥ずかしいくらいに硬くなっている。
もう一度、ヨウコ(仮)ちゃんをギュッと抱きしめる。
ええい、もうこのまま電話ボックスの中でパンツを下ろしてやってしまおうか。
いや、絶対やってやる。
辛抱たまらん!
イクぞ!
突撃ッ!

興奮がピークに達したその瞬間。
「ひゅー、ひゅー!」
え、何?
気がつくと、2人が入った電話ボックスをヤンキー数人が取り囲んでいた。夜中の梅田をフラフラ歩いていたら、いきなり電話ボックスの中でラブシーンがおっ始まったので見物に来たらしい。
「もっとやれや、コラア」
「こんなとこでオメコする気ィか?」
「やれ、やれ!やってまえ」
ガンガンとボックスに蹴りを入れながら囃し立てる。
ヤバい!
頭の中にこのままヤンキー達にどこかへ拉致られ、オレは半殺しに、ヨウコ(仮)ちゃんは輪姦される画ヅラがリアルに浮かんだ。

オレは、ヨウコ(仮)ちゃんと一緒に、勢い良く電話ボックスから飛び出した。
「走って!」
そのまま全速力で駆けた。
「なんや、もう終わりかいや、しょーもないのお」
「生でオメコ見せたれや!」
後ろから、ヤンキー達の罵声が聞こえる。
どのくらい走ったのだろう。
気がついたら東通り商店街の長い長いアーケードを抜けていた。

「ホンマ、危なかったなあ」
ホッと一息。
その時。
ヨウコ(仮)ちゃんがオレの右腕を掴んでジッと目を見つめてきた。
アーケードを抜けた先にはラブホ街が広がっている。
このタイミングで、やっとあのひと言が言えた。
「ホ、ホ、ホテル行こか」

しかし。週末のためかどこのホテルも満室。やっと見つけたのは、古い古いホテル。いや、連れ込み旅館といったほうが正しい超アナクロな宿。
宿に入るなり、布団に押し倒す。
やっと念願のセックスが出来る!
もうヤンキーの邪魔も入らない。
童貞の股間は再びギンギンに。
唇を激しく吸って、ヨウコ(仮)ちゃんのブラをはずして、パンティーをずり下げる。
再びイクぞ!
突撃ッ!

「………あれれ?」
気持ちだけが先走って、息子が一向に言うことを聞かない。
「しまった」
今さら後悔しても後の祭り。
恥ずかしさをごまかすためにしこたま飲んだ安酒とブロンのせいで全く勃たないのだ。
小さく小さく縮こまったままのチンコ。
うんともすんとも言わない。
いつもはところかまわず勃起するくせに肝心の時に限って、なんだよ!
「ごめんな」
ヨウコ(仮)ちゃんに謝った。
涙目。

じわじわと湧き上がってくる敗北感。
せっかくの童貞喪失の大チャンスに失敗。
もうこのまま一生勃起しないんじゃないか。
そんな絶望感に襲われながら、大の字になって天井を見つめた。
「………もう、しょうがないなあ」
そうウィスパーボイスで小さく呟くと。
ヨウコ(仮)ちゃんが何やら、オレの股間の辺りをモゾモゾやり初めた。
吸ったり擦ったり舐めたり。
「あああ、あああ、あああ」
思わず漏れる切ない声。
あんなに縮こまっていたチンコが不死鳥のごとく蘇った!
なんだこの娘、どこで覚えたんだ、そんなテクニック!?
なんとか合体。
童貞喪失を果たせたのであった。

(つづく)

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