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「死ぬ前にもう一回だけ冥土の土産にSEXしたい老婆募集」
ディレクターもヤバい人ばかり。
キチガイサトちゃんってあだ名の人がいた。テレビマンなのに第一級放送禁止用語をあだ名に持つ男。
会議中にいきなりズボンを脱いでオナニーしていたことがあった。プロデューサーが「何やってるの、サトちゃん?」って聞いたら「勝手にやってるんで、おかまいなく!会議進めて下さい」。
泣きのヤマさんって人もいた。
子ども相手のロケの時。最後、ロケの主人公の子どもが涙を見せたら感動的なシメになるのに泣かないことがあった。
「ここで泣いたら、感動で終われるのになあ。惜しい!……あとは編集とナレーションでなんとかしよう」
普通のディレクターならそう考える。でも泣きのヤマさんは違う。
「ちょっと待っててください」
ヤマさん、子どものところに行き、何やら耳打ち。すると、子どもがいきなり大泣きし始めた。
「カメラさん、早く!今、撮って!」
見事、子どもの泣き顔の撮影に成功。
カメラマンがヤマさんに聞いた。
「いったい子どもに何て言ったんですか?」
ヤマさん、ボソッと。
「君のお母さんがいなくなっちゃうよって言ったんです。これ言うと子どもは100%泣きます」
ヒドイ!でも、泣きのヤマさんと言われるだけある。必ず子どものシメの泣き顔を撮って帰ってきた。
番組でプロレス企画をやったことがあった。
しかし、本気でやりすぎて途中で出演者のお笑いタレントが怪我をしてしまった。
公開収録だったためもちろん観客を入れている。場内は騒然。これは事故だ。いったいどうすればいいのか。ディレクター以下スタッフ全員、顔面蒼白でオロオロするばかり。
そこで名物プロデューサーの小森田さんが立ち上がった。いったい何を言ってこの場を収めるつもりなのか?リングに上がって、マイクを持ってビシーーッと言い放った。
「今のことは、見なかったことにしてください!」
スタッフだけでなく、観客全員もズッコケ。
ネットやSNSのない時代、これでもテレビがテレビとして成立していた。
サトちゃんもヤマさんも小森田プロデューサーも。
みんな、今のコンプライアンスにうるさいテレビ業界からいなくなってしまったなあ。
いったい今、何をしているんだろうか?
わっしょい、わっしょい。
毎日がお祭り騒ぎ。
バラエティー番組のクレージーな熱に浮かされて無我夢中で突き進む日々。
中島らもから「一緒に連載をやらないか?」と担当の編集者を通じて打診があったのは上京して放送作家になって10年目の夏のことであった。
(つづく)