2/8 更新
「こいつ、シャブ中や」
ガンジー石原のすべらない話はまだ続く。もうひとつは「じゃがたら事件」。
日比谷の野音に、暗黒大陸じゃがたらのボーカル、アケミの追悼ライブを見に行った時のエピソード。
じゃがたらと言えば当時、インディーズシーンの中でカリスマ的な人気を誇っていた。
そのボーカル、江戸アケミが事故死して行われたそのライブ。
熱狂的なじゃがたらファンだったガンジー石原、酒を飲んでベロベロで踊り狂っていた。
「アケミー!アケミー!なんで死んでしもうたんや」
泣き叫びながら踊りまくり。
すると、隣席の客が。
「てめえ、さっきから目障りなんだよ!」
酔っ払ってぎゃあぎゃあうるさいガンジー石原にブチ切れて、またまたボッコボコに殴られた。
そのまま気絶。
気がついたら、ライブは終わっていて野音でひとり、血まみれで横たわっていた。しかも、カバンを丸ごとパクられて。ライブを見るついでに仕事も絡めて上京していたため、カバンには財布はもちろん免許証、健康保険証、銀行の通帳まで全部入っていたという。全てを失い、ザーザー降りの雨の野音で、かけていたメガネまで失い呆然とした話。
オレがこの話を披露したら、ガンジーさんが急に新事実を語り始めた。
「けど、後で考えたら、どうもカバンは自分でゴミ箱に捨てた気がする」
オレもらもさんも客もそれを聞いて思わず。
「え~~~っ!?」
「誰かにどつかれた後、周りからは白い目で見られるし。いたたまれなくなって、自暴自棄状態で、持ってたカバンをオラーッ!
ってゴミ箱に捨ててしもうた………2年ほど経ってから鮮明に思い出した」
「はやく話してくださいよ!そんな話、初めて聞いたわ」
「酔っ払うとついろくでもないことをしてしまうねん。年金手帳を捨ててしまったこともあんねん。もうこんなクソみたいな社会とは縁切りじゃ! って。で、後でどこに片付けたんやろうって部屋中を探しまわった」
その話を聞いて負けず嫌いのらもさんが。
「オレも5年前くらいに、躁病が出た時に、かけてたグラサンを手でグリグリグリグリッって割ってしもて、ゴミ箱にバーン捨てて。
その後、床にブリブリブリブリってウンコしたことあるよ」
よりによってウンコ話かい!トークとして最低の返しである。
他にもいくつか小ネタは用意していたのだが、らもさんとオレとで知っているガンジー石原のエピソードをほぼ全部喋り終わった時点でトークステージの上に置いてあった時計を見たらまだ1時間しか経っていなかった。
一応、2時間喋る予定であったので「まだあと1時間もある!」。
焦った。
結局予定を大幅に短縮してなんとか切り上げて終了。
このことがあってから、以降の「らもはだ」は、元役者で舞台経験があり、弁舌も立つマネージャーのアトムさんが司会進行を務めることになった。オレは一回でMCをクビになったワケだ。
楽屋で、涙目のオレ。
普段、放送作家としてタレントの司会ぶりに「なんでこんなにグダグダなんだよ!」と上から目線でダメ出しをしている立場なのだが、いざ自分がやってみたらこの体たらく。
落ち込んだ。
打ち上げは、ロフトプラスワンのイベントプロデューサー、サイトウさんの紹介で歌舞伎町のど真ん中にある、ぼったくり横丁の細い路地の奥の店「上海小吃(シャンハイハオツー)」へ。
金城武主演の映画「不夜城」のオープニングでロケに使われたのが納得できる「ここはホントに日本なのか?」と誰もが疑う超怪しい場所。
メニューを見て驚いた。「狗鍋」と書いてある。らもさんが店員に聞いた。
「これって、犬のことやんね?」
「ソウ!食ベタラ、モノスゴク精ガツクヨ!」
この場末感と犬鍋をらもさんがおおいに気に入って、以後、「らもはだ」の打ち上げはこの店でやるのが定番となった。
落ち込んでいたオレは「飲まなきゃやっとられるか」と、浴びるほど飲みまくってベロベロに。
打ち上げの帰り、消防車とけたたましいパトカーのサイレンと凄い数の警官で未明の歌舞伎町が大騒ぎになっていたのに遭遇。
どうやら風俗ビルがボヤを出したらしい。
「ガンジー石原の因果者の星が呼んだ火事やな」
らもさんがボソッと呟いた。
(つづく)