らもはだ日記

まず暴走機関車・室井佑月の口撃の矛先はオーケンに向いた。
ここに来る前に、元ホステスだった通信網を駆使してリサーチを敢行、オーケンの過去の女性関係の悪行を全部把握していると言い出した。
「前の彼女と、前の前の彼女と、その前の前の前の彼女までわかってる。どうやってセックスするかまで知ってるの!」
自信満々な室井さん。
慌てるオーケン。

さらに、信じてる占い師がいかに当たるかという話を始めて「占い師なんて信用出来ない」と主張するオーケンと真っ向対立。ステージに不穏な空気が流れだした。これはオレの拙いトークのスキルではどうすることも出来ない。
「松尾さん、助けてください!」
客として来ていたキッチュこと松尾貴史を、無理矢理、トーク席まで引っ張り上げた。
期せずしてオカルト反対論者としてテレビでも有名な松尾貴史が、酔っ払い暴走機関車・室井佑月と全面対決の図式に。

「よく当たるって占い師は、来る前に事前に室井さんの周辺をリサーチしまくってるんです。そこまでするかってことをやるんです。だって、室井さんは芸能人とか文壇の人、メディアの人をいろいろ連れてくるかもしれないわけでしょ。室井さんを広告塔に使おうと思ったら、それぐらいの努力はしますよ」
理路整然と攻め立てる松尾貴史。
なるほど! と、客席も納得の空気。
しかし、酔っ払い暴走機関車・室井佑月は認めない。

松尾貴史と戦っても分が悪いと直感したのか、再びオーケンに向かって掟破りの逆サソリ的なトーク技を繰り出す。
「その占い師に言われたの!『息子さんを大槻ケンヂさんが肩車してる姿が見えます』って。四柱推命で占うと、私と大槻さんは持ってる星が全部一緒なのよ!」
突然、何を言い出すやら。
さらにさらに。
オーケンに「好きだ」って告白してフラれた過去までカミングアウト。
「なんでそんなことを今、お客さんの前でバラすんですか!」
涙目になるオーケン。
騒然とするステージ。
ひっちゃかめっちゃか。

どさくさに紛れて、オレは室井さんに言った。
「オレ、室井佑月さんのことが超好みのタイプだったんですが、今日で見方が変わりました。そんな人だとは思わなかった」
一方的な決別宣言。
ニヤリと笑った酔っ払いの室井さん、完全に目が据わっている。
オレの右手を自分のおっぱいに携えながら、耳元で囁いた。
「揉んで、いいわよ」
この時の右手のぷにゅぷにゅの感触が未だに忘れられない。 
負けた。
完璧に負けた。

室井佑月色に染め上げられた、らも不在の「らもはだ」。
完全にベロベロになった室井さんが最後にしおらしい感じになって言う。
「私の夢を聞いてくれる!?」
いったいどんな壮大な夢を語り出すのか?
オレもオーケンも松尾貴史も客席も興味津々。
「何、何?」
室井さん、一呼吸置いて、大声で言い放った。
「私、駐車場経営をしたいの~月極で!
安定収入が欲しいのよ~!」
一同、それを聞いてまるでコントのようにズッコケて、イベントはシメとなった。
しかーし。
暴走機関車・室井佑月はそれだけでは止まらなかった。打ち上げの席でさらにヒートアップ。松尾さんと全面対決することになろうとは。

(つづく)

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