らもはだ日記

そんな武闘派・仲畑貴志を迎えての今回の「らもはだ」であったが、終盤で事件は起こった。
「なんだ、お前は!」
仲畑さんの怒声が響き渡る。
一瞬でピキーンと張り詰めた空気になる会場。
さすが武闘派コピーライターと呼ばれるだけのことはある。ドスのきいた声は迫力十分。
事件は、空気の読めないアホアホ客がキッカケだった。こちらが質疑応答を求めてもいないのに、トークの腰を折るダメダメ発言を客席から連発。
日本の広告界を代表する名コピーライターに向かってこんな失礼なことを言いやがった。

「仲畑さん、今、ボクにコピーを考えてください、30字以内!」
そりゃ、怒るわな。
オレも司会のアトムさんも凍りついた。
怒り心頭の仲畑さんがステージを降りて客をボコボコに殴ったりしたら新聞沙汰になるかも。出演者同士の乱闘騒ぎは日常茶飯事だった会場のロフトプラスワンとはいえ、さすがに出演者が客を殴ってはいけない。

ヤバい、どうしよう?

その時、らもさんが。
「中島らもの“らも”は“私らも”の“らも”!こんなコピーでええか?ハイ、一行3000万円ちょうだい!」
あまりにも鮮やかな切り返しに場内、大爆笑。仲畑さんも苦笑い。そのアホアホ客も黙ってしまい事態は収まって、なんとかトークは終了。
 
実はこの日、最初から波乱の予感はしていた。ここまで躁鬱病の「鬱」が勝っていたらもさんだったが、ここにきて一気に「躁」の部分がメリメリと頭をもたげてきたのだ。
ステージでもやたら、攻撃的な物言い。
いつもトークではボケ役にまわるらもさんが珍しくツッコミまくり。
「何が人気放送作家じゃ!資本主義のブタめ!」
「鮫肌、お前の年収ナンボや!?」
「パンクス名乗ってんねやったら、シャブぐらいやれよ!」
口汚く、イベントの相方のオレを罵って集中攻撃。
さらに、誰も頼んでいないのにステージの途中でギターをかき鳴らして歌い出す。
ロックンローラー、らもオン・ステージ!
ゲストの仲畑さんも半ば呆れていたほどだった。

 
当然、打ち上げの席でもハイテンション。
後で聞いたら、らもさん、アトムさん相手にホテルに帰ってからも夜中の3時過ぎまで一人で凄い勢いで喋り倒していたらしい。
この一ヶ月前、らもさんは医者に処方されていた向精神薬を止めていた。
聞けば、担当のヤブ医者に山ほど飲まなくて良い薬を処方されていたことが発覚したからだという。
薬を止めてから体調が劇的に元に戻った。目が見えなくて、奥さんのミーさんに口述筆記させていた原稿も自分で書けるぐらいまでに回復していた。

そこで良かった良かったで終わらないのが、中島らも。
元気になるのはいいが。
一気に躁転してしまったようなのだ。
知り合って17年経っていたが、こんなにやたらイケイケドンドンな物言いのらもさんを見たのはこの時が初めてであった。
7ヶ月後に大麻取締法違反の容疑でとっ捕まるのだが、この頃のらもさんは、会うたんびに明らかにおかしくなっていった。

(つづく)

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