らもはだ日記

「ムッシュ、いる?」
さらに!楽屋にふらりと入ってきた男を見てオレもオーケンも腰を抜かさんばかりに驚いた。
眼光鋭いヒッピー風のファション。
「や、や、山口冨士夫だ!」
伝説の村八分のギタリスト。ジャパニーズ・ロックの生きるレジェンド。
実は昼間、別の仕事の打ち合わせでらもさんと会っていて「今日、ムッシュとトークショーをやる」と聞きつけて楽屋を覗きに来たのだという。
「10年ぶりかなあ。久しぶりだなあ」
ムッシュと山口冨士夫が熱い抱擁で再会を祝す。目の前でその奇跡の光景を見ながら、
オレとオーケンで。
「こ、こ、これは!日本ロック界の伝説の融合だ!ミラクルだ!」
大感動。
生で2人のレジェンド同志の抱擁を目撃してしまった。
この後に用事があるからと帰っていく山口冨士夫さんの背中を見送りながら、オーケンと「凄い、凄いよ」と、うわ言のように呟いた。


そして始まった本番のトークステージ。
中島らもが「ただの一人のロック小僧」と化して、ファンだったムッシュに聞きたいことをどんどん聞いていく展開に。
「ショーケンと内田裕也が六本木で飲んで大ゲンカ事件」「頭脳警察のPANTAが日劇ウエスタンカーニバルのステージでオナニーしたのを袖から見ていた事件」「ウェスタンカーニバルの楽屋でミュージシャン仲間で殴り合い事件」など、ムッシュも超貴重な話を惜しげも無く繰り出す。
この時、特に印象に残っているのが「今一番嫌なことは?」って、らもさんが聞いた時のムッシュの言葉。
「まわりがどんどん死んでいくことかな。昔からの仲間が死ぬ。それを受け入れる自分を想像しただけで気が狂いそうになる」
日本のロックの生き字引き。その最前線にいる方ならではのリアルな言葉だと思った。

そして、終盤。
ここらでかまやつさんの歌を聴きたいらもさんの作戦開始。おもむろにこう切り出した。
「かまやつさんは今日、あくまでもトークイベントのゲスト。歌ってもらった瞬間にミュージシャンのギャラになる。それは一ケタ額が違うので今からオレがアコムに走らないかん」
そう言いながら、ステージの脇にはらもさんが家から持ってきた新品の12弦ギターが。
「だから、かまやつさんに歌ってもらうわけにはいきません」
ムッシュ、そのギターを見てムズムズ。
横で見ていてわかるくらい。
らもさんの作戦的中。

「このままじゃ、ボクが悪い人みたいに見えるので・・・」
そう言って、ついにギターを手に!
そこからはムッシュワールド。
ザ。スパイダースの名曲「ヘイ・ボーイ」に代表曲の「バン・バン・バン」
ここぞとばかりにシャウト。
らもさんも一緒に。オレとアトムさんも参加して。
盛り上がった。
トークの中で「すべてはショービジネス」と言っていたムッシュかまやつ。
ROCKもPUNKもRAPもHEAVYMETALも、とりあえず全ての音楽ジャンルは「ショービジネス」の中にある。それを忘れてはいけない。人を楽しませてナンボ。『芸術』がやりたきゃ他でやれ!
ムッシュの歌声を真横で聴きながら、15歳の頃から、ショービジネスの世界で50年、「人を楽しませる」ために生きてきた男の凄みをヒシヒシと感じた「らもはだ」であった。


そのまま「あ~楽しかった」で終わるはずだったのだが。
中島らもは怒っていた。
「なんでちゃんと歌ってなかったんや」
打ち上げの席で、オレを攻撃し始めた。
らもさんが指摘した通り、オレは自分の調子っぱずれな歌声がムッシュの弾くギターのテンポとズレると悪いと思い、実は歌うふりをしていたのだ。
それを知っていたらもさん。
おためごかしなオレの態度が許せないようだった。
オレは必死で言い訳をした。
「いや、ムッシュのギターを邪魔してはいけないと思って」
「だから、歌うふりをしてたんか。なんでちゃんと歌えへんねん。そっちのほうが失礼やろ!」
ことロックに関しては本気な中島らもの地雷をまたもや踏んでしまったようだ。
「すいませんでした!」
平謝り。
せっかくの楽しい打ち上げも台無しに。
中島らもとロック。
どこまでもロックに本気な中島らもを改めて知った一日であった。

(つづく)

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