4/25 更新
「らも容疑者、大麻取締法違反で逮捕」
中島らもは拘置所へ。
事実関係の確認のため当時の報道記事を集めてみた。
「近畿厚生局麻薬取締部は今年に入って中島容疑者の大麻使用の情報を入手。4日午後、本人を立ち会わせて自宅を家宅捜索し、仕事場として使用している1階居間のテーブル上で、市販たばこの箱に入れられた大麻たばこを発見。大麻取締法、麻薬取締法違反(いずれも所持)の現行犯で逮捕した。
押収されたのは大麻たばこ(5本)のほか、乾燥大麻(約4グラム)マジックマッシュルーム(約3グラム)、吸煙器など。乾燥大麻はプラスチックケースに入れ引き出しに、マジックマッシュルームはアルミホイルに包まれた状態で冷蔵庫内に保管されていた。
中島容疑者は逮捕時も取り乱す様子もなく、取り調べに対しても「逮捕の前日(3日)に吸った。テーブルに置いていたのは私です」と供述。だがマジックマッシュルームについては身に覚えがないと否認しているという。
麻薬取締部は5日に同容疑者を逮捕。ほかにも何らかの薬物を使用している疑いもあるため、今後は大麻の入手先や、いつから所持するようになったか徹底追求していく構えだ。また家宅捜索には同容疑者の妻も立ち会ったが、妻には容疑はなかった。(中略)自宅前では長男・晶穂さんんが「ファンの皆様を始め関係各位をお騒がせしました事を深くお詫び申し上げます」などという事務所のコメントを文書で配布した。近所の人によると、中島容疑者は夜中に大音量で音楽をかけていることもあり「近所付き合いもなかった」という」(スポーツ報知 2003年2月6日)
「大麻取締法違反(所持)の罪で起訴された作家の中島らも被告(50=本名・中島裕之)の保釈請求が25日、大阪地裁に認められ、大阪拘置所を出所した。
妻美代子さん(50)長男晶穂さん(28)が迎えたが、4日の逮捕以来、自由の身となった中島被告は驚くほどのハイテンション。
「日本全国民、ことに読者の皆様、出版社、知人、飼っている犬、猫、ハムスター… …
すべての動物たち。拘置所、拘置所の悪党たち、伏しておわび申し上げます。とにかく慙愧の念に耐えません」と深く頭を下げた。さらに「大麻開放論者だが、法治国家の日本では吸わないと著作で公言していたのに、魔が差して大麻を吸ってしまいました。大麻合法のオランダ・アムステルダムで吸うべきでした。自身の法に照らして、アメリカ式に56億7000万年の刑に処します。(中略)記者にたばこをリクエストし、満足そうに吹かすと「やっぱりたばこの方が大麻よりうまいわ!」と言い放って、拘置所を後にした」(日刊スポーツ 2003年2月26日)
読んでもらえばわかるが、完全に躁転している。そのまま、大阪市立総合医療センターに躁病治療のため、70日間入院した。
アトムさんによれば、この精神病院でたちまち患者たちのアイドルとなり「乳揉んでもエエって言うてくれる娘もおるんや」と見舞いに行ったアトムさんの前で満面の笑みを浮かべていたらしい。
アホか。
そして迎えた、初公判。
「検察側の冒頭陳述によると、中島被告は、大麻だけでなく、シンナーや覚せい剤などの使用歴もあるほか、大麻の使用を妻(50)に見られても「うるさい。見つからないから心配しなくていいんだ」と耳を貸さなかったという。さらに、長男(26)には「おまえも吸うか?」などと冗談半分で使用を勧めることもあったという。(中略)弁護人質問で同被告は、大麻使用のきっかけを「インドやオランダなど合法国で吸引した経験のノスタルジー」と説明。「創作に行き詰まり、ギザギザした精神を酒では癒せなかった」と証言した。さらに「日本の大麻取締法違反は、根底的にナンセンスだと思っていた。逮捕、拘束されて(自分の)時間が奪われるから今後は絶対に手を出さない」と持論を展開。弁護人に「聞かれたことに簡潔に答えてください」と注意される場面もあった。検察側の「今後、創作に行き詰まったときはどうする?」の質問には「拘置所で覚えたヨガをします」と答えた。
検察側は再犯の恐れが大きい」として懲役10月を求刑。同被告は意見陳述で「慙愧(ざんき)の念に耐えません。日の当たるところで活動し、みそぎとしたい」と再起を誓い、弁護側は「反省している」と執行猶予付き判決を求めた」(日刊スポーツ 2003年4月15日)
裁判所で大麻解放論を一席ぶってはイカンだろう。
聞けば弁護士に「それだけは言うな!」と事前に釘を刺されていたらしいのだが。
みんな、呆れた。
らもさん不在の中、ここまでの「らもはだ」をまとめた単行本「イッツ・オンリー・ア・トークショー」が3月に発売に。思いっきりおクスリ関係の話ばっかりだった井筒監督とのトーク部分は単行本には収録自粛となった。
精神病院に入院中にも、3月9日に漫画家の江口寿史さん、5月11日に役者の山内圭哉さんをゲストに、またもや「困った時のオーケン」こと大槻ケンヂさんを臨時ホストに迎えて「らもはだ」を、中島らも不在のまま敢行。
「らもさんより出席率高いかも」とぼやくオーケンであった。
5月の「らもはだ」では、入院中のらもさんからアトムさんがお見舞いついでに病院で録音してきた本人からのメッセージテープが流れた。
やけにテンションの高いらもさんの声が会場中に響く。
「こんにちはぁ。諸君、中島らもです。私、今回も出演することが出来ません。申し訳ないです。2月4日に11人の麻薬取締官が自宅にガサ入れに来まして。「お前ら、どことサッカーするつもりや!」と言ったんですが、ああいう人たちに冗談は通じません。それから拘置所に22日間いて一回家に帰って、いま大阪の精神病院で、静かにほとぼりが冷めるのを待ってるわけです。判決が出ましたら、また寄してもらいたいと思います。本当に生きているといろいろなことがあります。大波小波揺らり揺られて別れの川をえんやこら~っ… … …みたいな感じなんですが、もう大麻には手を出しません。今度はヘロインをやります。じゃあ、皆さん、さようなら。楽しんでいってください」
こんな状況でもちゃんとオチをつけて喋るサービス精神だけは見習いたい。
唯一本人と接触しているアトムさんから、らもさんの近況の報告も成された。
入院中、外泊許可をもらって自宅に帰ってきた時に、病院じゃ飲めないものだから、飲みだめ。3日で日本酒を三升も飲んだのだという。
アホか。
会場に失笑が。
5月26日、判決。
「西田真基裁判官は「読者に与えた影響は軽視できないが、今後は執筆活動で信頼を回復すると誓い、被告なりに反省している」として、懲役10月、執行猶予3年(求刑懲役10月)を言い渡し。西田裁判官は「今後の執筆活動に期待を寄せる読者の存在を忘れないでください」と語りかけると、中島被告はくぐもった声で何度も「はい」「はい」と繰り返した。(中略)兵庫県宝塚市の自宅に戻った中島被告は「裁判に時間がかかり、拘置所に20日、(そう病治療で)病院に70日。100日ムダにした。その間、毎日裁判のことを考え、実刑も覚悟した。いまは虚脱状態」と吐露。しかし解放論者の中島被告は「法に触れる行為をしたことは反省している」と言いながらも、十数年前に2度ヘロインを使用した経験を例に出し「大麻には習慣性はなく、気持ちが穏やかになるピースフルなドラッグ。シャブは最低だけど、大麻は文化。茶道のように楽しみや風情がある。僕の言い分をわかってくれた裁判官は85点」とらも節全開だった。(日刊スポーツ 2003年5月27日)
結局、キシモト嬢の判断で夏にやる予定だった「らもはだ」は一回休みになった。
そして秋。
2003年9月13日。
今回の「らもはだ」のゲストは漫画家の萩尾望都さん。
シャバに出てきた中島らもが初めて人前で喋る復活の日。
久しぶりの御大見たさに満員御礼、立錐の余地なしってくらい客の入ったロフトプラスワンに、らもさんが再び現れた。
「よっ、久しぶり!」
楽屋に、おクスリも酒もすっかり抜けて、えらく体調の良さそうならもさんが元気に現れた。
こっちは逮捕後初、8ヶ月ぶりに会うので「どんな顔をして会えばいいのか」と緊張していたのだが、拍子抜け。
まるで何事も無かったかのように「らもはだ」はリ・スタートしたのであった。
(つづく)